配信日 雑誌名
2023/05/09 サライ 2023年6月号

ムラブリ 文字も暦も持たない狩猟採集民から言語学者が教わったこと

ISBN: 4797674253

発売日: 2023/02/24

出版社: 集英社インターナショナル

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就活から逃げ出した言語学徒の青年は、美しい言語を話す少数民族・ムラブリと出会った。文字のないムラブリ語を研究し、自由を愛するムラブリと暮らすうち、日本で培った常識は剥がれ、身体感覚までもが変わっていく……。

言葉とはなにか? そして幸福、自由とはなにか? ムラブリ語研究をとおしてたどり着いた答えとは……?

人間と言葉の新たな可能性を拓く、斬新極まる言語学ノンフィクション。



★高野秀行(ノンフィクション作家、『語学の天才まで1億光年』著者)

「不思議な本。ただ面白いだけでなく、別の世界にトリップしたような感覚に襲われる。」



★川添愛(作家・言語学者、『言語学バーリ・トゥード』著者)

「生きる力を削がれた現代人のために、言語学者に何ができるのか。その答えがここにある。」



【ムラブリとは】

タイやラオスの山岳地帯に暮らす少数民族。人口は500名前後と推測される。

「ムラ」は「人」、「ブリ」は「森」を指すため、「森の人」を意味する。タイ国内では「黄色い葉の精霊」とも呼ばれる。

かつては森のなかで狩猟採集をしながら遊動生活をしていたが、定住化が進んでいる。

ムラブリ語には文字がなく、話者数の減少にともない、消滅の危機にある「危機言語」に指定されている。言語学的に希少な特徴が複数確認されている。



【ムラブリ(語)の不思議】

・あいさつがない?

・「上」は悪く、「下」は良い?

・暦も年齢もない?

・過去と未来が一緒?

・意図的に方言をつくった?

・数を数えるのは宴会芸? etc……



【内容の一部抜粋】

・初調査は突然の「帰れ」で終了

・お金がなさすぎて、ムラブリにおごってもらう

・5年かけて、ムラブリの「家族」になる

・人食い伝説によって分断されたムラブリのグループに100年越しに再会してもらい、その様子を映画にする

・ムラブリ語を話せるようになったことで、身体もムラブリ化していく

・日本でムラブリのように暮らしてみる etc……



【著者略歴】

伊藤雄馬(いとう・ゆうま)

言語学者、横浜市立大学客員研究員。

1986年、島根県生まれ。2010年、富山大学人文学部卒業。2016年、京都大学大学院文学研究科研究指導認定退学。日本学術振興会特別研究員(PD)、富山国際大学現代社会学部講師、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同研究員などを経て、2020年より独立研究に入る。

学部生時代からタイ・ラオスを中心に言語文化を調査研究している。ムラブリ語が母語の次に得意。

2022年公開のドキュメンタリー映画『森のムラブリ』(監督:金子遊)に出演し、現地コーディネーター、字幕翻訳を担当。本作が初の著書。