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2023/05/30 週刊ダイヤモンド 2023年6月3日号

世界でいちばん熱い日本酒

ISBN: 4022518758

発売日: 2023/02/21

出版社: 朝日新聞出版

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酒造りは経験と勘がものを言う世界だ。しかし大学を出たばかりの若者たちが、その道何十年という熟練の杜氏(とうじ)をも唸らせる日本酒を造ってしまう事件が起きた。だがそれは、単なる偶然でも、まぐれ当たりでもなかった。



孤立無援の中で業界の常識を打ち破り、新風を吹かせたその酒「廣戸川(ひろとがわ)」と「一歩己(いぶき)」の若き造り手は、「一升瓶を開栓し、飲みごろのピークを4日目に持ってくる」「もう一杯飲んでみようと思わせるように、味にわずかな苦みを含ませている」と、己の酒造り哲学を自信を持って語る。



どうして彼らは、全国に名を馳せる日本酒に肩を並べる、全国新酒鑑評会でも金賞を連発する酒を造れたのだろうか? その背景には、一昔前だったら考えられなかった、うまい酒を広めようとする酒販店のアドバイスと協力、新参者にもバイオテクノロジーを応用した酒造りを教える教育体制、そして何よりも競い合いながら高みを目指すライバルの存在があった。



経験や勘ではなく、バイオテクノロジーの力を借り、数値化できるものは数値化させ、酒販店の意見を参考にしながら消費者の嗜好や市場分析を行ない、最後は悪戦苦闘しながらど根性で活路を拓いていく日本酒の若き造り手たち。日本を代表する名酒を誕生させた蔵人たちの青春群像に迫る。新ものづくり王国・ニッポンの到来を実感させる元気が出るノンフィクション。



目次



第一章 二人の新星

杜氏が倒れる/ 東京での挫折 / ライバルへの嫉妬/ 蔵人との衝突/ 衝撃が走った

酒/ 初の金賞受賞/ 名杜氏の存在 / 失敗した酒造り/ 東京でのグランプリ/「日本一」の杜氏が壁に/ ブランドを支える酒屋/ 究極の「居酒屋酒」



第二章 福島の二人の巨星

吸水率のこだわり/ 廃品回収のおっちゃん/ NHKの番組が記録/ 東京からの一本

の電話/ 「飛露喜」の誕生/ 店主の魔法の一筆/ 「十四代」高木との出会い/ 定番

酒「本丸」の完成/ 酒屋は「画商」/ パリの靴屋の接客/ 「無濾過生でない定番酒を」



第三章 新たな彗星

「屈辱」と「敗北」/ 孤高の利き酒/ 蔵人たちの抵抗/ 製造量を十倍に/ 牽引者

は東京の酒屋/ 育ての親/ 「飛露喜」のライバル酒に/ 二人の「右腕」



第四章 日本酒の進化

普通酒の呪縛/ 阪神大震災が影響/ 幻の酒にはしない/ 金賞受賞の定番酒に/麻薬の酵母/ 「越乃寒梅」の時代/ 日本酒の「神」



第五章 東北の躍進

仙台日本酒サミット/ 「作戦会議」が成功/ 宮城の純米酒宣言/ 同期三人/ 「YMAGATA」ブランド/ ワインのような個性を/ 日本酒界の「異端児」/ 視線の先は世界に



第六章 原発事故

大津波が襲った/ 残っていた酵母/ 地酒とは/ 生き残った自分にできること/「土耕ん醸」の復活/ はきだされた桃/ 「東京に酒を売りに行こう」/ 宮城・岩手と福島の違い/ 「福島の酒を応援しよう / 土と米のアーティスト/ 土産土法/ 「山田錦」という「酒米の王様」/ 酒蔵としての答え



第七章 日本酒とは

女性の造り手たち/ 燗酒の魔法/ 晩酌の酒/ 日本酒に魅せられた外国人/ 世界に通用する酒/ 競争をやめた/ 令和型の流通/ 時代の橋渡しを



第八章 高く、高く

限界集落で酒造り/ 有名銘柄と方を並べる/ 自分しか造れない酒を/ 「金賞」十一年連続を逃す/ 子育てしながら酒造りを支える/ 「信長」と「家康」/ 「紡ぎ手」になりたい/ その先