配信日 雑誌名
2023/06/01 週刊新潮 2023年6月8日号

酔いどれクライマー 永田東一郎物語 80年代ある東大生の輝き

ISBN: 4635340422

発売日: 2023/02/18

出版社: 山と渓谷社

Amazonランク: 0

優れた登山家は、なぜ実社会で結実しなかったのか――。



東大のスキー山岳部に8年在籍し、 カラコルムの難峰K7を初登頂に導いた永田東一郎は、 登頂を機に登山の世界から離れてしまう。

建築の道に進んだものの、 次第に仕事を減らし、 不遇のまま46年の生涯を病いに逝ってしまった。



輝いていた1980年代という時代と下町で地元にこだわり続けた永田東一郎。

圧倒的な存在感を放ちながら、 破天荒で自由な生き方に、 高校の後輩として永田を見てきた作家の藤原章生氏が迫る。





■内容

プロローグ 十二年後に知った死



第一章 十七歳の出会い

 濃くなっていく永田東一郎の記憶/「田端の壁」初登攀

第二章 強烈な個性

 南硫黄島の「事件」/ 「くだらないぞ、そんな生き方」 /自由すぎる校風

第三章 下町育ちの“講談師”

 母仕込みの一人っ子/酒好きの父親/地元好きの「東京土着民」 /情けない自慢好き

第四章 東京大学スキー山岳部

 試練の夏合宿/「チュザックではさあ」

第五章 生まれもった文才

 読み手意識の表現者/中学時代の虚無/ジャーナリストヘの厳しい書評

第六章 強運のクライマー

 「ガーディアン・エンジェル」がついていた/歯がたたなかった「青い岩壁」/滑落五〇〇メートル、奇跡の生還

第七章 K7初登頂

 「普通の頂上」だった/真摯で緻密な戦略家/消えた山の情熱

第八章 山からの離脱

 四つの仮説/表現の舞台消え

第九章 不得意分野は「恋」

 十年の片思い/結婚という名のプロジェクト

第十章 迷走する建築家

 下積みに耐えられず/脱構築、ポストモダン/建築も人を殺す

第十一章 酒と借金の晩年

 人の金で飲み続け/あっけない死

第十二章 時空間を超えた人

過剰なほどの存在感/一九八〇年代、時代の輝き



エピローグはじまりの山、おわリの山





■著者について

藤原章生(ふじわら・あきお)

1961年、福島県いわき市生まれ、東京育ち。

86年、北海道大工学部卒後、住友金属鉱山に入社。89年、毎日新聞社記者に転じる。

ヨハネスブグ、メキシコシティ、ローマ、郡山駐在を経て、夕刊特集ワイドに執筆。

05年にアフリカを舞台にした短編集『絵はがきにされた少年』で第3回開高健ノンフィクション賞受賞。

主な著書に、『ガルシア=マルケスに葬られた女』 、 『資本主義の「終わりのはじまり」』、 『湯川博士、原爆投下を知っていたのですか』、 『ぶらっとヒマラヤ』など多数。

23年5月、中央大法学部の講義録『死にかけた人は差別をしなくなる』 (仮題)を出版予定。