配信日 雑誌名
2023/06/06 サンデー毎日 2023年6月18日号

掬われる声、語られる芸: 小沢昭一と『ドキュメント 日本の放浪芸』

ISBN: 4393441702

発売日: 2023/5/12

出版社: 春秋社

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萬歳・ごぜ唄・猿回しをはじめとした稀少な音楽芸能から節談説教、さらにはストリップにいたるまで、ナレーションとともに収録されたLP集『ドキュメント 日本の放浪芸』。その制作を通して自身の芸そして日本の芸と向き合い続けてきた俳優・小沢昭一の姿に迫る。

小沢が「放浪芸」に見たもの、求めたものは、何であったのか。作品の本来の制作意図、実現のコンテクストとそこに働く力学を詳らかにし、音と語りによるドキュメント、あるいは「声」の録音構成というひとつの文化運動の在り方を浮き彫りにする。



【目次】



はじめに

 文化資源化される「日本の放浪芸」

 LP『ドキュメント 日本の放浪芸』の語り

 「世のみなさんの捨てた芸」

 「無形文化財」再考

 本書で扱う資料について

 本書の構成と概要



序章 「河原乞食」という場所(トポス)

 契機としての『私は河原乞食・考』

 装丁にみる小沢を交差点とする文化地図

 対談という語り芸

 アメノウズメとストリップ――河竹繁俊の影響

 ストリップと「河原乞食」の接続――郡司正勝の影響

 書き換えられた「河原乞食」

 新劇寄席――「シロウト」が「クロウト」を越える試み



第一章 「放浪芸」の誕生と展開

 市川捷護の仕事

 LP『ドキュメント 日本の放浪芸』の誕生

 放浪する小沢昭一のドキュメンタリー

 LP『ドキュメント 又日本の放浪芸』の誕生

 「お金と換える芸」への転換

 LP『日本の放浪芸』シリーズと「ノスタルジー」

 シェーファーの大道音楽や呼売り人の声

 芸能者の環世界を描く



第二章 演者と観客の一体化、生と死の一体化

 永六輔・関山和夫・祖父江省念

 芸能史における節談説教

 第三作の構成

 小沢の節談説教――「シロウト・クロウト」のはざまで

 分析 亀田(クロウト)と小沢(シロウト)

 放送劇『夢の……』における小沢の夢

 金森千栄子と『夢の……』の制作背景

 演者と観客のあいだを結ぶ「新・新劇寄席」



第三章 放浪芸の「日本」の境界

 「日本」とは――第三作と第四作の幕間にて

 二〇世紀のアカデミズムにおける沖縄音楽の録音小史

 竹中労の幻のレコード『小沢昭一★一人芸 ハーモニカ★猥歌★小学唱歌★その他』

 竹中労監修『沖縄春歌集 海のチンボーラー』

 竹中労監修『沖縄/祭り・うた・放浪芸』

 過去の「日本」から現在の「日本」へ



第四章 ストリップを聴くこと

 複数のアメノウズメ

 客に「尽しきる」芸能者としての一条さゆり

 「同性愛芸能者」としての桐かおる

 一条と桐の実録映画と小沢

 第四作の構成と聴覚的内容

 マイノリティの声を聴く

 騙(かた)られた「神がかり」の声を聴く

 「なにものかに尽くし切る」芸能論

 ストリップを聴くことの意味



まとめ 芸能者の「環世界」のドキュメンタリー



あとがき

『日本の放浪芸』解説書の典拠一覧

文献・資料

主要人名索引