配信日 | 雑誌名 | 号 |
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2023/08/07 | 週刊現代 | 2023年8月12日号 |
占領下の女性たち 日本と満洲の性暴力・性売買・「親密な交際」
ISBN: 4000616013
発売日: 2023/7/1
出版社: 岩波書店
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戦後性暴力の実態と構造を明るみに出し、黙殺されてきた女性たちの生きざまを浮かび上がらせる
日本本土・満洲で同時進行的に形成された「性の防波堤」。そこには国家や共同体によって多くの日本人女性が駆り出された。ジェンダー、セクシュアリティの視座から占領下の多様な性暴力の実態と構造を明るみに出すとともに、戦後史のなかに黙殺されてきた被害女性たちの生きざまを貴重な資料と証言に基づいて浮かび上がらせる。
■目次
序 章 女性たちの体験からとらえる敗戦・被占領
第一章 国家による「性接待」──「良き占領」のためのジェンダー・ポリティクス
はじめに
一、RAAの誕生と「意義」
二、米軍兵士から見たRAA
三、占領軍第一陣を迎えた神奈川県の対応
四、占領軍からの「性接待」要求
五、地方の「特殊慰安所」の女性たちの「声」
六、RAAと「特殊慰安所」が占領軍兵士に与えた影響
七、「フラタニゼーション」=「親密な交際」
八、「女の特攻」から交渉する「パンパン」へ
まとめ
第二章 守るべき女性、差し出されるべき女性──「満洲引揚げ」と性売買女性たち
はじめに
一、「引揚げ」女性をめぐる先行研究
二、開拓団女性が強いられた性暴力
三、関東軍兵士が目撃した性暴力
四、ソ連兵の性暴力を退けるための主体的営為(エイジェンシー)
五、性売買女性へのまなざし──「性接待所」「性の防波堤」の設置
六、満洲国の首都・新京──「女の特攻」
七、自ら「防波堤」になった女性たち
八、当事者の語り
まとめ
第三章 集団自決とジェンダー──開拓団少女の「引揚げ」体験
はじめに
一、大鹿村を後にして
二、開拓団の生活
三、敗戦──「玉砕」は男の思想
四、「匪賊」は悪い連中ではない
五、「子ども」たちのあっけらかんとした強さ
六、「いけにえ」になった二人の女性へ
七、達連河炭鉱へ、そして弟を中国人へ預ける
八、母たちと離れて、兄と二人で「引揚げ」
九、少女が一人で生きる力
一〇、「出会った人がわたしの教科書」
まとめ
第四章 「働く女」が支える街──熱海の住民と「パンパン」たち
はじめに
一、RAAと「赤線」が共生する街
二、米兵受入れのスタート
三、「パンパン」女性たちの姿──糸川地区の人々の証言
四、基地の町と「パンパン」たち──御殿場の場合
五、熱海の住民の「パンパン」への親密なまなざし
六、「しんけん」な「仕事」
七、「赤線」の灯が消える
まとめ
第五章 少年の目に映る「ハニーさん」──朝霞に生きた「パンパン」たち
はじめに
一、キャンプ・ドレイクと朝霞の街の変貌
二、「金ちゃん」こと田中利夫さん
三、朝霞に集まってきた女性たち
四、「オンリーさん」は出世頭
五、「金ちゃん」の記憶に鮮明な「ハニーさん」たち
六、「白百合会」のおんな親分
七、闇屋のおじさんとポン引き男
八、「マスコット・ボーイ」、「ハウスボーイ」
九、ある老女「あぐりさん」の語り──「乞食パン助」の矜持
第六章 被占領と復員兵──敗戦を思い知らされる男たち
はじめに
一、敗残兵への冷たい視線
二、「パンパン」の出現と復員兵
三、自国女性を戦勝国兵士へ売る復員兵
四、復員兵と「戦争責任」とジェンダー
五、元志願兵のまなざし──増田博の場合
まとめ
終 章 危機に際して女性を差し出す国に生きて
一、日本と満洲で同時進行の「性接待」
二、危機を乗り越えるための主体的営為(エイジェンシー)
三、公的記憶と集合的記憶──「自発性神話」のつくられ方
四、アメリカの占領──「良き占領」を攪乱する「パンパン」たち
五、「パンパン」という存在
六、復員兵の男性性
七、忘却を許さず──自ら犠牲になった女性たち
おわりに
初出一覧
あとがき