配信日 雑誌名
2023/08/23 週刊新潮 2023年8月31日号
2023/08/28 25ans 2023年10月号

氷室冴子とその時代 増補版

ISBN: 4309031145

発売日: 2023/06/24

出版社: 河出書房新社

Amazonランク: 0

80~90年代、少女小説を中心に活躍し、再評価の機運も高まる作家・氷室冴子。少女小説研究の第一人者が丹念な調査と取材から、その全貌に迫る。作家や編集者に追加取材を行い増補刊行!





少女小説の革新、「女性作家」としての活躍と葛藤、新たなジャンルへの挑戦――

80~90年代、エンタメ小説の最前線で戦い続けた、



いま、最も再評価すべき作家の全貌に迫る。





『クララ白書』『雑居時代』『なぎさボーイ』『なんて素敵にジャパネスク』などの少女小説、ジブリアニメにもなった青春小説『海がきこえる』、エッセイ『いっぱしの女』『冴子の母娘草』などで絶大な支持を得、今も人気女性作家たちがその影響を公言する作家・氷室冴子(1957-2008)。少女小説研究の第一人者が丹念な資料調査と取材から、その功績と志に迫る。



若木未生氏、桑原水菜氏や各社担当編集者のインタビューを増補。

未完の傑作『銀の海 金の大地』第二部についての証言も収録!



【目次】



はじめに



第1章 氷室冴子以前――文学と少女マンガの揺籃期

 幼年期の少女マンガ体験

 文学少女としての目覚め

 藤女子大学進学と女子校文化との出会い

 碓井小恵子時代の創作

 「モギ店ハンジョー記」と「少女マンガの可能性」



第2章 作家デビューから『クララ白書』まで

 『小説ジュニア』とジュニア小説の歴史

 新人賞への応募と佳作受賞

 デビュー作「さようならアルルカン」

 『小説ジュニア』にみる氷室冴子最初期作品

 『さようならアルルカン』と『白い少女たち』

 実家からの独立

 『クララ白書』──少女たちの解放区

 『クララ白書』と少女マンガ

 雑誌『宝島』の書評



第3章 マンガ原作の仕事と初連載『雑居時代』

 演劇を少女マンガのモチーフに

 『ライジング!』の連載

 宝塚への移住とファン活動

 バウホールを描くこと

 藤田和子との共同作業

 『小説ジュニア』の初連載『雑居時代』

 『雑居時代』人気と倉橋数子というキャラクター



第4章 一九八三年・八四年にみる多様な作品群

 『恋する女たち』──ガールズトークのリアリティ

 『ざ・ちぇんじ!』──少女小説としての「改変」

 『シンデレラ迷宮』──少女の目覚めと心の王国 

 『蕨ヶ丘物語』──ローカルコメディの世界

 『少女小説家は死なない!』──パロディにしのばせた少女小説の多様性

 『古事記』への関心と『ヤマトタケル』



第5章 『なんて素敵にジャパネスク』と少女小説ブーム

 結婚をめぐる対立から生まれた『なんて素敵にジャパネスク』

 『なんて素敵にジャパネスク』シリーズの構成

 初夜から東宮廃位問題へ

 氷室冴子人気と『ジャパネスク』受容

 少女小説ブームと氷室冴子

 同時代における氷室冴子評価

 少女小説マーケットの拡大



第6章 男の子の行方――氷室冴子の少年主人公小説

 『なぎさボーイ』シリーズと複数視点の描写

 クリエイターにみる氷室冴子作品の影響

 『北里マドンナ』──「少女」から離れて

 氷室冴子の仕事道具

 『冬のディーン 夏のナタリー』──プレ『海がきこえる』としての模索



第7章 少女小説から離れて――エッセイと一般小説の仕事

 氷室冴子、東京へ

 エッセイと一般小説の連載状況

 氷室冴子の一般小説

 氷室冴子と直木賞

 『ターン──三番目に好き』──大人の恋愛小説への挑戦

 『いもうと物語』──幼年期の祝福

 初エッセイ集『冴子の東京物語』

 『プレイバックへようこそ』──過去への視線と世代の相対化

 出版業界のなかの「女」──氷室冴子とフェミニズム

 『いっぱしの女』──「女」にまつわるエッセイ集

 『冴子の母娘草』──母と娘の闘い

 家庭小説の復刊──「角川文庫マイディアストーリー」とブックエッセイ

 『ホンの幸せ』──書物へのまなざし



第8章 イメージから生まれた物語――『海がきこえる』

 高知との出会い

 『海がきこえる』のストーリー

 情景の見える文体へ

 『海がきこえる』と挿絵の世界

 『海がきこえる』のヴァリアント

 『アニメージュ』連載版『海がきこえる』

 『涼宮ハルヒ』シリーズのなかの『海がきこえる』

 アニメーション版『海がきこえる』

 続編『海がきこえるⅡ──アイがあるから』



第9章 古代への情熱――『銀の海 金の大地』

 九〇年代とファンタジーの潮流

 『銀の海 金の大地』連載まで

 『銀の海 金の大地』の世界

 挿絵と古代の文化

 『銀の海 金の大地』にみる古代の風俗描写

 少女小説の限界へ──『銀金』にみるヴァイオレンス描写

 まぼろしの「佐保彦の章」



第10章 氷室冴子は終わらない――九〇年代後半以降から

 旧作のアップデート

 『クララ白書』のリメイク

 新装版『なんて素敵にジャパネスク』

 大人の恋愛小説執筆をめぐる模索

 休筆期のこと──氷室冴子の二〇〇〇年代

 コバルトという場所

 作家としての再始動──「月の輝く夜に」の加筆をめぐって

 闘病期

 氷室冴子の死とメディア報道

 氷室冴子受容の「断絶」

 継承へ向けて

 氷室冴子作品復刊の動向

 作家・氷室冴子像とその先の可能性──古典への志

 物書きとしての苦悩

 氷室冴子を未来へ繫ぐ



おわりに 心に金の砂をもつ――氷室冴子と私



附録 氷室冴子 「少女マンガの可能性」



氷室冴子略年譜