配信日 | 雑誌名 | 号 |
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2023/09/04 | 週刊ポスト | 2023年9月15日号 |
2023/10/05 | 週刊新潮 | 2023年10月12日号 |
がんの消滅:天才医師が挑む光免疫療法 (新潮新書)
ISBN: 4106110067
発売日: 2023/08/18
出版社: 新潮社
Amazonランク: 0
なぜ「天才」なのか
どこが「ノーベル賞級」なのか
原理はシンプル――だがその画期的機構から「第5のがん治療法」と言われ、
世界に先駆け日本で初承認された「光免疫療法」。がん細胞だけを狙い撃ち
し、理論上、「9割のがんに効く」とされる。数々の研究者たちが「エレガ
ント」と賞賛し、楽天創業者・三木谷浩史を「おもしろくねえほど簡単だな」
と唸らせた「ノーベル賞級」の発見はなぜ、どのように生まれたのか。
「情熱大陸」も「ガイアの夜明け」も取り上げた天才医師に5年間密着、数
十時間のインタビューから浮かび上がる挫折と苦闘、医学と人間のドラマ。
「はじめに」より
がんをもはや「怖くない」と言う人もいる。
国立がん研究センターによれば、日本人の2人に1人ががんになる。東京都をは
じめ、各自治体は「早期発見すれば、90%以上が治ります」とがん検診を勧める。
「全身にがんが広がっていなければ、約50%の人が治ります」と言う医師もいる。
(中略)
だがそれでも、日本人の死因1位は1981年から変わらずがん(悪性新生物)
だ。2021年の厚生労働省の統計によると、がんの26・5%は2位の「高血圧性
を除く心疾患」の14・9%を大きく引き離す。年間170万人ががんになり、その
うち70万人が治療法がないなどの理由で「がん難民」になると言われる。
結局のところ、日本人は2人に1人ががんになり、4人に1人はがんで死ぬ。
この数字が示すのはむしろ、身内や親しい友人をがんで失ったことがない人な
ど、どのくらいいるのだろうということだ。
「9割のがんに効く」治療法があれば、どのくらいの人たちと私たちはまだ一緒に
過ごせていただろうかということだ。
光免疫療法はまだ途上である。現状は、限られた病院で、限られた患者の、限ら
れたがんに施されるに過ぎない。「夢の治療法」が現実化するためには、越えなけ
ればならない壁がいくつもある。 本書では足かけ6年にわたる小林久隆医師への直接取材を基に、光免疫療法のメ
カニズムとその現在、過去、未来を描くとともに、私たちが直面する「壁」とは何
なのか、この治療法が生まれた背景に何があったのかを報告したい。
「目次」より
はじめに
第一章 光免疫療法の誕生
実験現場の奇妙な現象/光免疫療法の「発見」/光免疫療法の原理/標準治療/
三大療法/「がんの消滅」/NIH──米国国立衛生研究所/39歳でのリスター
ト/〈ナノ・ダイナマイト〉/爆薬IR700/起爆スイッチ/スイッチのオン
・オフ/〈魔法の弾丸〉/分子標的薬/ミサイル療法/9割のがんをカバーする
/光免疫療法の真価/免疫はがんを殺せるか/制御性T細胞/〈免疫システムの
守護者〉/「全身のがんが消えた」/偶然か戦略か/イメージングがもたらした
もの/“見る”ことと“治す”こと/光免疫療法への道/完璧な理論武装
第二章 開発の壁
資金の壁/誰と組むか/西へ東へ/三木谷浩史と父のがん/「おもしろくねえほ
ど簡単だな」/1週間で3度の会合/RM -1929/治験の壁/施術条件の壁
/ある同僚の死/効きすぎてしまった?/奏効率の壁/政治の壁/「ひとりの天
才がいるだけではダメ」/辿り着いた国内承認/現場の医師より/光免疫療法で
はない治療/「人生最後の山」
第三章 小林久隆という人
ノーベル賞はありうるか/「同世代のヒーロー」/医師で化学者で免疫学者/
「まっすぐではなかった」道/謳歌した大学院時代/渡米ショック/学位論文/
苦い教訓/どん底の研究生活/“医者”か研究者か/まともなことをしてるんや
ろか/年1500件の内視鏡検査/「がんこ」で「しつこい」/少年時代/灘の
“化学の鬼”/京都大学へ/何かを見つけるための6年間/震災の記憶/日本の
キャパシティ/骨ぐらいは拾ってやる/「無駄な実験なんてひとつもない」
終章 がんとはなにか
がんは難しい/セントラル・ドグマ/自己の分身/光免疫療法の未来
おわりに