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2023/10/05 週刊新潮 2023年10月12日号

孤塁 双葉郡消防士たちの3.11

ISBN: 4000229699

発売日: 2020/01/31

出版社: 岩波書店

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われわれは生きて戻れるのか? ――原発が爆発・暴走するなか、地震・津波被害者の救助や避難誘導、さらには原発構内での給水活動や火災対応にもあたった福島県双葉消防本部一二五名の消防士たち。原発事故ゆえ他県消防の応援も得られず、不眠不休で続けられた地元消防の活動と葛藤を、消防士たちが初めて語った。一人ひとりへの丹念な取材にもとづく渾身の記録。



■著者からのメッセージ

2011年3月12日。東京電力福島第一原子力発電所の1号機爆発の映像は、誰もが驚きをもって見守っていたのではないでしょうか。その画面の向こう、爆発現場の数キロ地点で、住民避難誘導、避難広報、そして救助・救急搬送活動を必死に行なっていた消防士たちがいました。

その双葉消防本部のみなさんに初めて会ったのは、2018年10月のこと。そこから1年ほど通い、当時活動をしていた消防士66名から話を聞き、さまざまなことを教えてもらいました。その想像を絶する過酷な活動は、原発事故が「なかったこと」のように語られる現在こそ、知らなければならないと改めて感じています。

これまで、多くの被害者・避難者から、それぞれが抱えさせられた原発事故の被害を聞いてきました。そしていま、それぞれの立場の違いから「被害の語りにくさ」が色濃く広がっています。その一方で、「今、やっと話せる」ということもある。そういった事実を、一人の小さな声を、書き手としても、隣で生きる一人の人としても、大切に受け取りたいと思っています。

原発事故は終わっていない。そして、その事故をどう捉え、どう教訓を得るのかは、この時代に問われていると思います。どうか、この本を読んだみなさまが、ともに考えてくださることを願っています。



■編集部からのメッセージ

これまで全く表に出ていない話ばかりです。

チェルノブイリでも消防士の被ばくが大きな問題でしたが、福島第一原発の地元消防が、地震・津波・原発災害のなか、どのような状況におかれていたのか。丁寧な取材で消防士たちの思いをすくいとった本書の記述に、原稿整理をしながら何度も洟をすすりました。

『世界』連載中も大きな反響がありましたが、著者・吉田千亜さんは単行本化のためにさらに取材を敢行。総勢70名近い消防士のことばが、当時の危機的な状況を立体的に浮かび上がらせます。

地元を愛し、地元に暮らし、人命救助を使命としていた双葉郡の消防士たち。

著者が言うように、彼らが生きていてくれたからこそ聞けた話です。

そして、聞き取り伝えてくれた著者がいてこその本です。

ぜひこの本を、多くの人に読んでいただきますよう、心よりお願いいたします。



■読んでくださった方々の声

○「原発爆発を受けて「遺書」を書く消防士たちの姿が心から離れない。ノンフィクションにもかかわらず、現代文学の切っ先に触れたような衝撃だった。」――盛田隆二さん(小説家)



○「この「生」の翻弄に、いったい誰が責任を取ったのだろう。」――今井照さん(地方自治総合研究所主任研究員)



○「強いられた犠牲を「美談」にせず、忘れないための記録」――清水奈名子さん(宇都宮大学教員)



○「『孤塁』、いわゆるスーパーヒーローものではなく、登場する人たち一人一人が、生身だと感じさせてくれる。」――70代男性



■目次

プロローグ

1 大震災発生──3月11日

2 暴走する原発──3月12日

3 原発構内へ──3月13日

4 三号機爆発──3月14日

5 「さよなら会議」──3月15日

6 四号機火災──3月16日

7 仕事と家族の間で──3月17日~月末

8 孤塁を守る

エピローグ

あとがき

参考文献

われわれは生きて戻れるのか?―原発が爆発・暴走するなか、地震・津波被災者の救助や避難誘導、さらには原発構内での給水活動や火災対応にもあたった福島県双葉消防本部の消防士たち。他県消防の応援も得られず、不眠不休で続けられた地元消防の苦難と葛藤が初めて語られた。一人一人への丹念な取材にもとづく渾身のノンフィクション。

吉田千亜(よしだ ちあ) 1977年生まれ。フリーライター。福島第一原発事故後、被害者・避難者の取材、サポートを続ける。著書に『ルポ母子避難』(岩波新書)、『その後の福島──原発事故後を生きる人々』(人文書院)、共著『原発避難白書』(人文書院)など。

吉田/千亜

1977年生まれ。フリーライター。福島第一原発事故後、被害者・避難者の取材、サポートを続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)