配信日 雑誌名
2023/12/07 週刊新潮 2023年12月14日号

ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく

ISBN: 4760150234

発売日: 2018/10/09

出版社: 柏書房

Amazonランク: 0

【推薦のことば】



19世紀のポスト・トゥルース。暴走する天才崇拝者が問いかける。

「あなたは本当に事実だけで満足できるのか?」―――高原英理



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【概要】



「運命」は、つくれる。

犯人は、誰よりもベートーヴェンに忠義を尽くした男だった──

音楽史上最大のスキャンダル「会話帳改竄事件」の全貌に迫る歴史ノンフィクション。



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【イントロダクション】



「事件」が発覚したのは、1977年――ベートーヴェン没後150年のアニヴァーサリー・イヤー。

震源地は、東ドイツの人民議会会議場で開催された「国際ベートーヴェン学会」。



ふたりの女性研究者が、ベートーヴェンの「会話帳」――聴覚を失ったベートーヴェンがコミュニケーションを取るために使っていた筆談用のノート――に関する衝撃的な発表を行った。



会話帳に、ベートーヴェンの死後、故意に言葉が書き足されている形跡を発見したという。



犯人は、ベートーヴェンの秘書、アントン・フェリックス・シンドラー。

ベートーヴェンにもっとも献身的に仕えた「無給の秘書」として知られた人物である。

ベートーヴェン亡きあとは全部で3バージョンの伝記を書き、後年の──あるいは現代における「楽聖べートーヴェン」のパブリックイメージに大きな影響を及ぼしていた。



たとえば、ベートーヴェンが『交響曲第5番』冒頭の「ジャジャジャジャーン」というモチーフについて「運命はこのように扉を叩くのだ」と述べたという有名なエピソードは、シンドラーの伝記を介して世に広められたものだ。



そんな人物が、会話帳の改竄に手を染めていたとなれば。

それはベートーヴェン像の崩壊に等しかった。



以降、シンドラーは音楽史上最悪のペテン師として、研究者や音楽ファンから袋叩きに遭うことになる。



だが、彼をいたずらに非難することは本当に正しいのだろうか。

シンドラーのまなざしに憑依する──つまりは「犯人目線」で事件の全貌を追うことによって、いまいちど、彼が「嘘」をついた真の動機を明らかにすべきなのではないだろうか。



生い立ち、学生時代の行状、ベートーヴェンとの関係。

ベートーヴェンの死後、会話帳改竄に至るまでの経緯。

罪を犯したあと、どうやってそれを隠しとおしたのか。

そして、100年以上にわたってどのように人びとをだまし続けたか。



それらを知らずして、音楽史上最大のスキャンダル「会話帳改竄事件」の真相に迫ることはできない。



音楽史上最悪のペテン師を召喚し、彼が見た19世紀の音楽業界を描き起こす前代未聞の歴史ノンフィクション ――ここに開幕。



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【目次】



序曲 発覚



おもな登場人物



第一幕 現実

第一場 世界のどこにでもあるド田舎

第二場 会議は踊る、されど捕まる

第三場 虫けらはフロイデを歌えるか

第四場 盗人疑惑をかけられて

第五場 鳴りやまぬ喝采



間奏曲 そして本当に盗人になった



バックステージI 二百年前のSNS―会話帳から見える日常生活―



第二幕 嘘

第一場 騙るに堕ちる

第二場 プロデューサーズ・バトル

第三場 嘘vs嘘の抗争

第四場 最後の刺客



バックステージII メイキング・オブ・『ベートーヴェン捏造』―現実と噓のオセロ・ゲーム―



終曲 未来



あとがき

犯人は、誰よりもベートーヴェンに忠義を尽くした男だった―。音楽史上最大のスキャンダル「会話帳改竄事件」の全貌に迫る歴史ノンフィクション。