配信日 雑誌名
2024/02/20 サンデー毎日 2024年3月3日号

楽天の日々

ISBN: 490805973X

発売日: 2017/07/11

出版社: キノブックス

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恐怖が実相であり、平穏は有難い仮象にすぎない。何も変わりはしない――



現代日本最高峰の作家による、待望の最新エッセイ集。

デビューから五十年にわたり、ジャンルの壁を超え「エッセイズム」を追求してきた古井由吉。この十数年の作品を中心に、様々な紙誌から百余篇に及ぶエッセイを集成。

一九九一年発表の短篇小説「平成紀行」を特別収録。



古井作品の多くを手掛ける菊地信義による装幀。

高密度な写実表現で知られる諏訪敦が描く、古井由吉の肖像を装画として使用。



読むことと書くこと、古典語のおさらい、芥川賞選考、阪神淡路大震災、東日本大震災、気象、草木や花、エロス、老い、死、大病と入院、ボケへの恐怖、最初の記憶、大空襲下の敵弾の切迫など、多様なモチーフを端正かつ官能に満ちた文章で綴る。



「悲観に付くほどには、物事をきびしく見る人間ではない。楽天に付くほどには、腹のすわった人間でもない。いずれ中途半端に生きてきた。それでも、年を取るにつれて、楽天を自身に許すようになった。理由は単純、老齢に深く入れば来年のことすら、ほんとうのところ、生きているものやら、わからないのだ。この春も、また自分にめぐってくるものやら、知れない。だからこその楽天である。」(本文より)

恐怖が実相であり、平穏は有難い仮象にすぎない。現代日本最高峰の作家による、百余篇収録の最新エッセイ集。短篇小説「平成紀行」を併録。