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2023/11/28 週刊東洋経済 2023年12月2日号

『女の世界』 〔大正という時代〕

ISBN: 486578392X

発売日: 2023/9/27

出版社: 藤原書店

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レビュー

1915(大正4)年から21年まで6年間、大正まっただ中に発行された、ユニークな女性雑誌があった。

『女の世界』と名付けられたその雑誌は、天下国家を論じる総合雑誌でも、女性の啓蒙を意図した教養雑誌でもない。「男でも読む」「毛色の変った」女性誌として出発し、それを最後まで貫いた。

編集方針は自由奔放、何物にもとらわれないアナーキーなゴッタ煮。高度成長期の一時期の週刊誌のような猥雑さ、と思えば、真正面から教育、文化、文学と向かい合って徹底的に論ずる。

肩ひじ張らない自由な姿勢で、社会的問題ばかりか、政治、経済、思想、文化、文学に向き合いながら大衆性を獲得していた。堺利彦の「新聞三面記事評論」、松崎天民の探訪記、島村抱月と松井須磨子の恋愛、岩野泡鳴と清子の離婚問題。大杉栄、神近市子、伊藤野枝の三人の手記の独占掲載など、歴史的記録といえる。

(本文より)

著者について

【著者紹介】

●尾形明子(おがた・あきこ)

東京に生れる。早稲田大学大学院博士課程修了。近代日本文学、特に自然主義文学と女性文学を専門とし、長谷川時雨主宰「女人芸術」「輝ク」を発掘・研究した。東京女学館大学教授を経て、現在、文芸・評論活動。

おもな著書に『女人芸術の世界――長谷川時雨とその周辺』(1980)『「輝ク」の時代――長谷川時雨とその周辺』(1993、以上ドメス出版)『田山花袋というカオス』(1999、沖積社)『自らを欺かず――泡鳴と清子の愛』(2001、筑摩書房)『華やかな孤独――作家・林芙美子』(2012、藤原書店)『評伝 宇野千代』(2014、新典社)他。編著に『長谷川時雨作品集』(2009、藤原書店)他。



(本データは刊行時のものです。)