配信日 | 雑誌名 | 号 |
---|---|---|
2024/11/25 | 週刊ポスト | 2024年12月6日号 |
おきざりにした悲しみは
ISBN: 400061665X
発売日: 2024/11/11
出版社: 岩波書店
Amazonランク: 0
レビュー
世界のすべてに見捨てられても、きっと神様は見ている。
そう信じたくなる〈奇跡の物語〉です。
原田マハさん(作家)
サヨナラ満塁ホームラン小説だ。藤圭子と山下清と無法松にでも譬えたくなるような子供と年寄りがトリオを組んで辛酸をなめる。下り坂だ、夕日だ、現代日本の底辺だ。けっこう深刻。しかし軽みがある。ユーモアがある。どこか温かな風俗小説の風情。でも物語は暗い夜に向かうほか無さそうな……。いや、堪えられない展開になる。ひっくり返る! 軽みや温かみは幸福を招くのだ。水戸黄門や暴れん坊将軍のような存在が登場する。上り坂になり朝日がさす。悪い奴が吹っ飛ぶ。トリップだ。祝祭だ。荒唐無稽さこそが物語の快感。芝居や映画にもできるぞ。劇作家でもある原田の面目躍如。おきざりにした悲しみが百倍返しされるのだ。
片山杜秀さん(評論家)
著者について
原田宗典(はらだ・むねのり)……1959年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1984年に「おまえと暮らせない」ですばる文学賞佳作。主な著書に『スメル男』(講談社文庫)、『醜い花』(奥山民枝 絵、岩波書店、2008年)、『やや黄色い熱をおびた旅人』(岩波書店、2018年)、『乄太よ』(新潮社、2018年)、『メメント・モリ』(岩波現代文庫)、訳書にアルフレッド・テニスン『イノック・アーデン』(岩波書店、2006年)がある。