配信日 | 雑誌名 | 号 |
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2025/03/14 | GINZA | 2025年4月号 |
なにが? 永遠が (世界の迷路)
ISBN: 4560084076
発売日: 2015/8/19
出版社: 白水社
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出版社からのコメント
遺作となった、自伝的三部作最終巻
北米メイン州の島で半世紀近く過ごし、パリの文壇とは無縁に生きた孤高の作家ユルスナール。「現代に迷い込んだ古典作家」とも評される彼女自身について、われわれは決して多くを知っているとはいえない。
本書は、じつに二十年という歳月を費やして、はるか両親の先祖にまで遡りながら〈私〉という存在の謎に迫った、まさに著者のライフワークと呼ぶべき自伝的三部作〈世界の迷路〉の最終巻である。前二作では、感傷を排した透徹した筆により、歴史小説さながらに〈母〉の物語、〈父〉の物語を描いたユルスナールが、本書ではようやく〈私〉の記憶へと降り立つ。しかし、相変わらず自らを語る著者の態度は慎ましい。自身について決して直截に語ることのなかったユルスナールは、遺作となった本書においてもまた、最愛の父を、そして父が愛情を傾けたひとを語る「交感の魔術」によって、〈私〉を逆照射する。また語られるのは青春期までであるが、さりげなく挿入されたエピソードには、小説や著者自身に関する重要な鍵が豊富に隠されている。訳者堀江敏幸の「交感の魔術」にも耽溺されたい。
著者について
1903~1987年。フランスの作家。著書に『ハドリアヌス帝の回想』『黒の過程』(フェミナ賞受賞)『東方綺譚』『三島あるいは空虚のビジョン』など。80年、女性初のアカデミー・フランセーズ会員となる。自伝的三部作〈世界の迷路〉は晩年の集大成。