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暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン
配信日 雑誌名
2026/05/13 週刊文春 2026年5月21日号

暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン

  • 新商品
商品コード: 4766424387

発売日: 2017/7/15

出版社: 慶應義塾大学出版会

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メディア掲載レビューほか

忖度による服従

ティモシー・スナイダーの『ブラックアース』は衝撃的だった。ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の現実を暴いたからだ。殺戮はドイツ国内で起きたと思われがちだが、犠牲者の97パーセントは当時のドイツ国外にいた。そして、殺戮に手を貸したのは一般市民だった。つまりぼくたちは、状況次第でいつでも虐殺者になりうる。

トランプを熱狂的に支持するアメリカ人や、プーチンに声援を送るロシア人たちを見ると、暗澹たる気持ちになる。歴史は繰り返す?

『暴政』は、トランプの大統領就任に危機感を抱いたスナイダーが、緊急出版した本である。解説等を除くと120ページあまりの小さな本だが、いかにして歴史に学び、愚行の繰り返しを防ぐかがわかりやすく書かれている。

全部で20あるレッスンの1番目は「忖度による服従はするな」。もちろん佐川宣寿国税庁長官に向けられた言葉ではない。この章で語られるのは1930年代のオーストリアの話だ。オーストリア人たちはナチス・ドイツに忖度し、積極的に服従して、自国内のユダヤ人たちを殺戮していったのである。

以下、「組織や制度を守れ」「一党独裁国家に気をつけよ」「職業倫理を忘れるな」「自分の意志を貫け」「自分の言葉を大切にしよう」といったレッスン項目が並ぶ。

驚いたことに、いくつかの例外を除いて、ほとんどが現代日本にあてはまる。「自分で調べよ」「『リアル』な世界で政治を実践しよう」など、ぼくたちのためかと思った。トランプやプーチンがいなくても、日本だって五十歩百歩の状況ということだ。歴史に学ばぬ者は、また誤る。

評者:永江朗

(週刊朝日 掲載)

著者について

[著者]

ティモシー・スナイダー(Timothy Snyder)

1969年オハイオ州生まれ。イェール大学歴史学部リチャード・レヴィン講座教授。オクスフォード大学でPh.D.を取得。専攻は中東欧史、ホロコースト史、近代ナショナリズム研究。邦訳されている著書として『赤い大公――ハプスブルク家と東欧の20世紀』『ブラックアース――ホロコーストの歴史と教訓』(共に慶應義塾大学出版会、2014年、2016年)、『ブラッドランド――ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』(2015年)、インタビュアーを務めたトニー・ジャットの遺著『20世紀を考える』(2015年)がある。11のヨーロッパ系言語(とりわけスラヴ系言語)を駆使することで、ホロコースト研究に新しい地平を拓いた。ハンナ・アーレント賞をはじめ多彩な受賞歴を誇る。有力紙誌への寄稿も数多い。



[訳者]

池田年穂(いけだ としほ)

1950年横浜市生まれ。慶應義塾大学名誉教授。ティモシー・スナイダーの日本における紹介者として、本書のほかに『赤い大公――ハプスブルク家と東欧の20世紀』『ブラックアース――ホロコーストの歴史と教訓』(慶應義塾大学出版会、2014年、2016年)を翻訳している。ほかにタナハシ・コーツ『世界と僕のあいだに』(同、2017年)、マーク・マゾワー『国連と帝国――世界秩序をめぐる攻防の20世紀』(同、2015年)、アダム・シュレイガー『日系人を救った政治家ラルフ・カー』(水声社、2013年)など多数の訳書がある。

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